代替わり地域密着内科医院クリニック併用住宅の休診しない建替え

湘南大磯で診療を続けている「脇内科」様から、医院の一部を建て替えるご相談をいただきました。

目次

住宅と診療所に挟まれている建物の老朽化

内科診療所の建物はふたつの建物が連結してひとつの建物として機能していました。ふたつの建物のうちはじめに建てられたものは、老朽化が建主様ご本人でも分かるくらいになり、これでは安心して患者様をお迎えすることが出来ないとお感じになっていたそうです。

医師先生の代替わり

また、現在の脇医師先生のご子息様も内科医師で、他県の病院にお勤めで、今回の建物建替えを機にお戻りになり、現在の医師先生から診療所を引き継いで代替わりをされることになりました。

代替わりにあっては、大磯の地で永年に渡り診療を続けて来られたことで得られた信用をこれからもいただけるように、変えるところと変わらないところを慎重に見極めて、計画を進めることになりました。

診療所機能の整理

建替え工事を行うにあたって、ふたつの建物に分けられていた各機能役割について、

  • 工事中、どうするか
  • 完成後、どのように運営するか

を、整理することになりました。

出入り口

もともと壊さない建物側に患者様用の出入り口は位置しているため、工事中はそのまま利用されることになりました。

建替えの建物が完成した時にはそちらに新たな出入り口を設けることになりました。後述になりますが、既存の出入り口は完成後は発熱外来患者様の専用出入り口になることにされました。

受付・待合室

受付と待合室は出入り口と同様に、工事中は壊さない建物の既存を利用して、完成後は新しい建物側に移されることになりました。

診察室

診察室は既存のままとすることになりました。新しい建物には診察室に連結して処置・検査を行う部屋が設けられました。

レントゲン室

レントゲン室も既存のまま利用されることになりました。ただ器具はアナログフィルムからデジタル器具に取替えられる予定です。

このレントゲン室が工事中も継続利用出来ることから、休院しないで建替え工事が進められたと言えます。

発熱外来隔離検査室

既存の医院には解体される建物に設置されていたために、工事中は受付時間をずらして診療することにされました。

完成後は、患者様用の出入り口を新しい建物に移して、既存の建物の出入り口を発熱外来患者様の専用出入り口にして、既存の玄関を間仕切って専用の診察室にしました。患者様同士が交錯しないようにしました。

患者様用トイレ

福祉のまちづくり条例に基づいて、患者様用トイレは、車椅子の方でも利用可能な広さで新たな建物に設置されました。

引き戸の扉の幅、トイレ内の広さ寸法、手摺付きの便器洗面器具など最小限必要な寸法や設置器具が定められています。

スタッフ更衣室

解体された建物にあったスタッフ皆様の更衣室は、新たな建物に設置されました。

更衣室は収納室と一室になり、広い部屋を棚で間仕切って利用することになりました。

休院しないで建替え工事を行う

解体しない診療所建物に全ての機能が維持できたので、工事中も休院する必要が無いことを確認できました。

特にレントゲン室が継続利用出来ることが最大の決め手でありました。他の部屋や設備は工事中、患者様にご不便をお掛けしてしまいますが、何とか診療は維持出来ることになりました。

休院しないことは、地域の皆様への診療サービスを継続維持できるので、医師先生にとって最大の安心事のようでした。

診療所併用住宅とする計画と間取りプラン

以上の個々の部屋の条件を確認した後、診療所は地上階に配置することも確かめられて、建物は総二階建ての診療所併用住宅にすることとなりました。

1階は、患者様の出入り口と待合室受付と処置検査室、そしてトイレとスタッフ更衣室。

2階は、院長室と休憩室。

という、構成になり、間取りプランがまとめられていきました。

挟まれている場所に最大限広く

建物はご自宅と既存診療所に挟まれた場所ですが、この場所に最大限広さを確保した建物になりました。

  • 建築面積(建ぺい率)の最大まで確保
  • 隣の建物との隙間は工事中の足場が建てられるギリギリまで拡大

の建物です。

屋根

総二階建ての建物の屋根は、建物外観を四角い箱のように見せるために、水平に近い勾配の片流れ屋根になりました。周囲三方は壁が立ち上がり、立ち上がりのない面に屋根板は突き出して雨水は樋に落とされました。

水平に近い勾配の屋根で雨が漏れないように出来る屋根は、金属屋根によって葺くことが望ましい(降った雨水が確実に下部に流れ落ちれる)ので、中でも安価なガルバリウム鋼板のハゼ織り工法で葺かれました。

建物の外観

建物全体は総2階の建物になり、両隣の建物と比べると大きなボリュームの建物になりました。そこで下記のような工夫を行って、建物の見栄えを良くしたり周囲と調和する建物になることを目指しました。

大きな建物を小さく見せる

ボリュームが大きくなった建物を少しでも威圧感のない外観にする場合は、建物の外壁を一様にしないで、細分化することが1つの方法としてあります。外壁面を、1階と2階の上下で分けたり、入り口を節目に左右に分けたりして、その長大さを抑えた表現にしました。

外壁面の統一

また、新たに建つ建物の道路面の外壁は、既存の診療所の道路面の外壁位置と同位置にしました。

外壁面を統一して、診療所建物の一体化を計りました。

出入り口の格子扉

出入口部分は外壁の左右を分節する部分で左右の外壁とは一段差が付いています。そこには上下の高さを強調するように縦格子が取り付けられました。

格子の下部は出入口なので、診療中は片方に引き寄せられて開口部になります。

医院名看板

診療所の前面の道路は、幹線道路ではないにしても自動車が往来し、歩行者も行き交います。

往来する方々に医院の存在を認識していただくために、往来する方々の目に入るように道路に直角にあった既存看板をより大きくした内照式の看板が取り付けられました。

また入り口の格子引き戸には、患者様の出入り口を示すように立体の医院名が取り付けられました。さらに診療科目、診療曜日と時間は、金属の板に文字を貼って取り付けられました。

そしてスロープのアプローチを上がった先の壁面には、立体的にした医院名が取り付けられました。

バリアフリーまちづくり条例

診療所建物は不特定の患者様が集まる施設なので、誰もが差し障りなく利用出来なくてはならないという主旨のもと、施設には住宅にはない設備の設置が義務付けられています。

スロープアプローチ

木造の建物では、地上階の床高さは湿気を含む土面から45センチ以上確保するよう指定されています。(湿気を抑えられるように施した場合は制限はありません)すると、地上階の床に上がるには、自然段差が生まれます。健常の方にとってはこの段差を階段で上下すればすみますが、足腰に支障のある方や車椅子を利用する方にとっては超えられない段差となります。そこで断続的に高さの上がるスロープの設置が必要になります。木造の地上階においてスロープの長さは平面図を見ていただくと分かる通り全体の約「5分の1」になる広さになります。このスロープアプローチが設置されました。

出入り口引き戸

玄関の出入り口の扉については、

  • 開口幅が80センチ以上
  • 開き戸ではなく引き戸

が求められます。

またウィルス感染防止対策として取っ手などに触れることなく開閉が行われる自動ドアになりました。

車椅子利用者様も使えるトイレ

条例では車椅子を利用されてる方でもスムーズに用が出せるような、

  • 扉の寸法と開閉方法
  • 内部の広さの寸法
  • 必要機器と設置方法

が定められています。

指定されている内容に沿って患者様用トイレが設けられました。

安心を感じていただく吹抜け待合室

敷地の広さの条件やその他必要な諸室を確保する中で待合室の確保できる広さが定まりました。

条件がなければ広い面積を確保したいところです。限界はあるので、様々な工夫をすることによって、待合室を豊かな空間にして患者様のご安心をいただけるように努めました。

下足のまま入る

診療所内へは靴を脱がずに下足のまま行き来してもらう方法は変えずに継続されました。

これは診療所の医師先生のお考えによります。下足のまま診療所に入ることは、

  • 玄関で靴を脱ぎ履く手間がなくなる
  • 床の段差が無くなる
  • スリッパなどの上足が要らない

というメリットがあります。

そのためにも前述しましたが、玄関扉は、自動引き戸になっています。

吹抜けと高窓

待合室をより広く感じていただくために、高い天井空間にしました。面積×高さによる容積を大きくすることで、単なる人と人との間隔が蜜になる窮屈感を頭上の抜けを確保することで解消する工夫です。

さらに天井付近に採光用の窓を設けて、日中は自然光を拡散して取り込んだ明るい待合室になるようにしました。

照明

天井高さ2.5メートル前後の天井高さの部屋においては、天井面に照明器具を取り付けて部屋全体の明るさを確保することが多いです。しかしながら天井の高い空間では天井面に照明器具を取り付けても天井の高さによって照度の分布が床面まで届きにくいので、壁面を一様に明るくすることで部屋全体が明るい印象になれるようにしました。

壁面の途中にライティングレール(可動式のスポットライトを取り付けられる照明用電源レール)を設置して、スポットライトで壁面が満遍なく照らされるように設置しました。

換気

天井の高い待合室の換気は、

  • 機械設備による換気は、天井面に排気換気設備を2台設置して、上部に溜まった暖められた空気を排気して、新鮮空気を床に近い高さレベルで取り込む方式にしました。
  • 窓を開ける矯正換気は、吹き抜け上部に外壁面に高窓を2方向面に設け、これを開放して上部に溜まった空気を排気して、地上部に開放できる窓を設けて給気 (外気の取り込み)が できる方式にしました。

患者様の混み合い状況によって換気方式を選べられるようにしました。

エアコン

天井高さが高い吹抜け空間においては、必ずと言って良いほど「夏は暑く、冬は寒くならないか?」というお尋ねを受けます。断熱の性能を高くして、空間の空気の循環機能を確かにすると、懸念はなくなります。

後述する以下の状況を整えると、吹抜け空間でも良好な空調環境になります。

そして、エアコンを複数台配置して空調環境=温湿度調整を容易にしました。器具は特別な器具ではなく、沢山生産されている器具を選択して器具代を抑えることにしました。

またエアコンを複数台設置するのは、

  • 1台に負担を掛けないで、分担させること
  • 万が一故障した場合に、故障しない機器が残り診療が継続できること

を前提としています。

サーキュレーターかシーリングファンか

吹抜け空間の空気を循環させるために、吹抜け空間の上部にファンを設置して空気を循環させました。

循環させる器具は、

  • 壁付けエアコンのような箱状の扇=サーキュレーター
  • 天井から吊るす羽根扇=シーリングファン

から選べられました。

どちらも機能的には十分な空気循環ができますが、吹抜け空間の中央に配置できて、全体を満遍なく循環できる シーリングファンが選ばれて取り付けられました。

掲示板

診療所の待合室では、受付をする際、診療をお待ちいただく際、患者様にお知らせしたい内容が、ポスターやチラシになっています。

ポスターやチラシを掲示する場所を、受付の左右の壁に設置しました。掲示板はポスターやチラシを磁石で止めるものが選ばれました。他には画鋲で止めるものや接着剤で貼るものがありましたが、画鋲は患者様が間違えて踏んでしまったり子供が触れてどこかに刺してしまわぬようにとお考えになって、磁石が効くボードを壁下地に埋め込んでポスターやチラシが掲示できるものされました。

吸音天井

待合室の床や壁の仕上げ材は、可能な限り汚れにくい材料とされましたので、表面はある程度硬い材料です。

硬い材料は汚れにくい性質を持ちますが、浴びた音は反射する性質があります。

待合室では患者様と患者様が、患者様と受付が会話をします。当然その声は重なり合います。発した声は、床や壁に当たり反射します。いつまでもその音が吸収されないと、音はずっと響き渡ります。

音の響き渡りを少しでも吸収して響きを消すために、天井面の材料は吸音性能を有する材料が選ばれました。

受付カウンター

スロープでアプローチし、自動扉が開いて待合室に入ると、折り返した先に受付カウンターがあります。検査診察処置室との間に位置しています。

カウンターの形

カウンターは、患者様も受付職員も立ったままで対応する高さ(1.1メートル)の部分と、患者様が手荷物を持っている時 や 書面に記入をする際に座って記入する場合を想定して、高さの高いカウンターとは別に70センチの高さのカウンターが用意されました。

カウンターの内側は椅子に座ってデスクワークが出来る形状になっています。低いカウンターの部分も同様の形状になっています。

カウンターの電源コンセントや通信ケーブルの処理

電源コンセントは床の直ぐ上にあって、そちらから配線します。デスクまではデスクに配線用の穴を開けて配線します。

デスクの上にコンセントがあると、デスクの上が蛸足配線のコンセントケーブルで煩雑になる傾向があるためです。

カルテ収納

カルテや様々な書類は、カウンターの背面の壁面収納に納める方針にされました。

壁面収納は天井高さまであるので、

  • 天井付近を、扉蓋つきの在庫書類収納
  • 中央部を、開放のカルテ収納棚
  • 下部を、様々な書類を既製品引き出しを置いて収納する場所

になりました。

カルテ収納棚は、各々がA4クリアファイルに納められていて、そちらを縦にして収納する方式にされて、かつファイルが傾かないように細かく仕切り板を設置しました。

飛沫防止アクリル板

新型コロナウイルスの感染拡大防止対策のひとつとして、カウンターにおける飛沫感染防止として、カウンターにアクリル板を設けることにしました。

アクリル板は、

  • 常時 拭き掃除で 消毒できること
  • 取り外して洗浄消毒できること、取り替えられること
  • 感染が心配ないときは、アクリル板を外して開放出来ること

と言う条件で設計されました。

アクリル板は道具を使わずに取り外しができます。

照明用 浮き板

受付カウンターの照明は、上部に取り付け用の浮き板を設けて、この板を利用してカウンターに対してダウンライトを設置して カウンターに照明が届くようにしました。

この浮き板は、待合室の全体を照らすスポットライトを設置する場所として、上側にライティングレールが設置されました。

待合室の大型モニター

診察を待つ患者様が待合室の椅子で待たれる際に、医師先生が患者様にお伝えしたいことを映像に映し出したいというご方針で、待合室の壁面に大型のモニターを取り付けられました。

建物骨組みが組み立てられて、待合室の広さ空間を感じれる場面で現地で、モニターの大きさ(50インチ)と掲示する場所を定めて下さいました。合わせてモニターの裏側になる部分に、電源コンセントと情報用ケーブル取り出し口を設置することにしました。

映像は医師先生が選ばれた内科用のデジタルサイネージ(映像表示)をモニターで流されました。

患者様が座る待合椅子

待合室の患者様が座られる椅子は、

  • 他人患者様との距離間隔を状況によって空けられるようにすること
  • 患者様のプライベートを確保しつつ、可能な限り皆様に座っていただくようにすること
  • 液体消毒液で消毒ができること
  • 清潔感と温かみが感じられること

という条件で探されました。

来院される患者様と付き添われる方の状況と、患者様同士の距離を保ちつつ皆様に座っていただくという方針で、一人掛けと二人掛けの椅子を合わせて設置されました。

他の患者様とは間を保ちたいお気持ちに添い、感染症拡大の状況をみながら椅子の間隔を調整することが出来るものにされました。

発熱隔離待合個別診察室

診療所の一部を建て替えている間、残った部分で診療は継続されました。建替えられた部分が完成して、患者様の出入り口が新たな場所に移りました。それまで継続して診療された部分の出入り口を利用して「発熱患者様用の隔離診察室」とされました。感染症による発熱症状の患者様は、こちらの出入り口から出入りしていただき、他の患者様と接触することなく診療が受診できるようになりました。

患者様ご自身も、他の患者様達も、安心して診療に来院していただきたい医師先生のご方針により整備されました。

院内処方薬局

脇内科様では院内で処方する薬局があります。建替え中も継続されていました。新たな診療所でもそのまま継続されて、患者様にお薬を処方されました。

元の受付内部にあって、プラン変更することなく継続出来たためです。

検査処置室のエコーモニターのための照明

患者様の検査や処置治療を行う部屋の照明は、見た目の色がそのまま認識出来るように、白色(赤みや青みの色の無い色)の照明器具が選ばれました。

照明器具を選ぶ際に、器具によって照明の色が異なるために確認される内容です。(最近はLED照明器具の発達により、色温度もリモコンで調節出来る器具も発売されています。部屋の使い方の状況によって、照明の色温度を変える=部屋の灯りの印象を変える ことが容易に出来る様になっています)

処置室ベッドのカーテン設置

ベッドの患者さんに診療処置をされる際は、周りに見えないようにカーテンで覆います。ベッドの周囲ピッタリに囲うわけではなく、医師スタッフの方が処置を出来る様に、患者さんが着替えができる様に、スペースを空けてカーテンの位置は定められました。

カーテンレールは天井から吊るすように取り付けられて、人の頭上と床上は開放されて空気が回るようになっています。

和室

お客様が来訪されてお休みいただくお部屋がご用意されました。

畳敷の和室です。

床の間

こじんまりですが床の間が設けられました。奥行きは畳敷の場所を最大限広くするために60センチとしました。

床柱

床柱はお部屋の中に収納を設けるためにも、床の間の奥行きを越えて手前に突き出た場所に立てられました。

部屋に突き出た場所に立てられましたので、存在感を小さくするために、直径75ミリの杉丸太が選ばれました。

収納

床柱をきっかけにして、床柱の左側は収納になりました。収納は太鼓貼りの両開きの扉で塞がれました。

収納自体は上に浮いた様になり、床板が壁端まで伸びました。

エアコン取付け

エアコン器具は収納の上部に配置されて、部屋側には粗いガラリが取付けられました。

エアコンへの給気は、床の間の上部に開口を設けて空気が届くようにしました。

こちらの和室の外壁窓は唯一床の間の袖壁面に設けられました。障子を開けると、敷地内にある樹木が見えたり、湘南の空が臨める場所に開口を切りました。

各々は決して大きな窓ではないために、和室を広く見せるためにも、双方の障子枠を関連付けて、壁面自体を楽しめるようにしました。

床の間から窓が突き出す棚板は、上記窓の下枠となっています。

障子間仕切り

和室は廊下に面していて、あえて壁面を設けずに障子で間仕切ることになりました。障子のデザインは建主様のお好みで選ばれました。

障子の紙は破れないようにするために、和紙の障子紙ではなく、薄いアクリルシートに和紙を貼ったシート「ワーロンシート」が貼られました。

床畳

多少でも部屋を広く感じていただくために、床畳は縁のない琉球畳が選ばれました。

天井

こちらも竿を省いて線を無くして、木板材が貼られました。

天井照明

天井の高さを可能な限り高くするために、屋根裏底まで天井が上げられたために、天井照明は直付けの照明器具が選ばれました。調色調光が出来る器具で、部屋の使用によって、自由に照明を変えられることができました。

トイレ

来訪されたお客様が迷わないように、和室客間の直近に廊下を挟んで設けられました。単なるトイレではなく洗面所も兼ねています。

既存窓再利用

既存建物にあった建主様ご家族の思い出がこもっている内部の引き違い型の木製ガラス窓は、解体時に丁寧に取り外されて保管されて、今回内部の窓に再利用設置されました。

枠材は再塗装されました。

インナーバルコニー

2階の吹き抜けに沿って通路があり院長室に至りますが、その通路に面して様々な用途を前提として利用される「インナーバルコニー」が設けられました。患者様の目に届かないという意味もあり「内部の物干し場」ではありますが、様々に使えることを前提に、日差しを吹き抜けに届けるために、大きな外壁窓 と 通路と一体に開放できる4連ガラス引戸が設けられました。

リビング(院長室)

院長室は、正に院長のための個室執務室として、またクリニックに来訪されたお客様と面談する応接室として設えられました。

インテリアデザイン

院内の白を基調とするインテリアとは打って変わり、落ち着きを主題とした色調素材の仕上げ材が選ばれました。

照明

床壁天井の内装仕上げとは別に、今後 執務デスクや本棚、ソファが持ち込まれる予定であったために、部屋の照明は、家具の配置や明かりの強弱の調整を自由にできるように、可動式のスポットライトが取り付けられました。

天井にライティングレールが付けられて、自由にスポットライトを配置して、お好みの照明空間を演出できます。

ミニキッチン台

部屋の隅には、この部屋で給湯などができるように、最小限にミニキッチンが設けられました。

普段は扉を塞いで閉まっておけます。

医療用廃棄物ゴミ保管置場

診療や検査を行うことで出来るゴミは専門処理者によって処理されます。ゴミの収集があるまでは院内に保管しておきます。その場所を、スタッフ出入り口の階段下に設けました。扉で塞いで保管しておけます。

スタッフ更衣室の収納室

クリニックスタッフの皆さんのロッカーやクリニックの消耗品収納の部屋はひとつの部屋を家具で仕切る形で設けられました。

現在のところはアナログ機器に対する品物で一杯で、近々にはこれらの在庫が不要になり、スペースが縮小されると捉えて、スタッフの皆さんのスペースが拡充出来るとお考えになったためです。

以上が、設計と組み立てられて完成した内容の説明でした。

以下は、設計完了後、工事金額のお見積りが始まり、工務店様を決定し、工事が始まり、設計内容が工事中にどのように定まっていったかを説明させていただきたいと思います。

見積り依頼

医師先生皆様のご希望を検討を繰り返して設計図がまとめられました。まとめられた設計図を基に複数の工務店様に工事金額のお見積依頼をしました。

ただし最近は工務店様にお見積りのお願いをしてもお忙しかったり、現場代理人様の余裕が無いなどの理由で、お見積りをお断りさされることが多いので、医師先生に多数の工務店様を選んでいただき、皆様にお願いをしました。

結果、お選びいただいた工務店様の半分の工務店様がお見積りをお受け下さいました。

お見積り依頼する工務店様を選ぶ

お見積り依頼をする前に工務店様候補を選ばなくてはなりませんが、医師先生から「どのような工務店様を選べば良いか?その方法を教えて欲しい」とご依頼がありました。

北島建築設計事務所としましては「正直な方」が良いと思っております。そこで「正直な方」とは 絶対ではありませんが、以下の条件が当てはまる方を探していただきたいとお願いしました。

  • 老舗であること
  • 公共建築工事を小さくとも毎年手掛けていること
  • 会社は大きくないこと

老舗

会社としての経歴が長いことは、総じて堅実な経営をしていなければ続きません。具体的な年数などはありませんが、創業から永い歴史があることは、会社の体制が良いことを示していると考えています。

公共建築工事

公共建築工事では、非常に沢山の確認事項や書類や図書の提出が求められます。設計図の内容をしっかりと理解し、その内容で施工図を描き上げ、承諾されなければ工事に着手出来ません。工程管理や品質管理も厳しいです。そのような工事をされている環境がある方々であれば、民間の工事であっても同様な工事の進め方をしてくださると考えています。

会社の規模

老舗で公共工事を手がけているとなると、会社の規模は大きくなりがちです。木造の建物や規模の小さい建物の工事を大きな工務店様が行うとなると、人件費をはじめとする経費がかさんで工事金額が高額になってしまいます。工事金額を抑えるには、登場人物を極限まで少なくしなければなりません。よってそれは会社の規模について、可能な限り小さい方が工事金額は安価になると考えています。

以上の条件は絶対ではありません。事前に上記の内容が判れば工事金額をお願いできます。しかしながら「正直な方」であることは客観的には表示されません。お知り合いやどなたかによる上記の評価があれば宜しいかと思っております。

長い見積り期間

工事金額のお見積りをお願いすると新築工事(建替え工事)では、最近では約2ヶ月の期間を必要としていると見ています。どの様に依頼する側の都合で期間を短縮したくても短くはならないのが実情です。よって十分なスケジュール確保が必要と思います。

お見積書内容査定

工務店様から提出いただいた工事金額お見積書は、設計者として、以下の内容を査定します。

  • 工事内容に誤りが無いか?
  • 二重に計上されている内容は無いか?
  • 抜け落ちている内容は無いか?
  • 異様に高額な(低額な)金額は無いか?
  • 内容に「一式」表示が無いか?

を確かめています。

特に「一式」という表示には注意を払っています。「一式」と内容がまとめられてしまっている(詳細な表示記載がない)場合は、その内容について、設計図が読み込めない、もしくは工事が出来ないと判断します。このような表示記載が多い場合は、施主様に報告し例え金額が安価であっても、ご依頼については注意を要すると報告しています。

お見積り金額比較

お見積書を査定させていただいた中で、問題がない場合は金額の高低をお示しして、施主様に工事をご依頼する工務店様を選んでいただいております。

工事以外で必要な費用

建物を使い始めるにあたり、建物の工事金額に含まれないものもあります。事前に概要をお示しして、全体金額の把握、注文手配の時期についてお知らせしました。

  • 家具
  • ロッカー
  • カーテンやブラインド
  • テレビやパソコン
  • 医療器具
  • 靴拭きマットや傘立て
  • 引越し費用
  • ホームページ

建築確認申請

工事金額のお見積り依頼とは別に並行して、建築確認申請が提出されました。建物自体の建築基準法にける種別は「4号」建物で、審査期間は約半月で済みました=確認済書が発行されました。

「4号」建築物とは、

  • 特殊建築物(不特定多数の人々が利用する建物)で床面積200m2未満
  • 木造で、2階建て以下、延面積500m2未満、建物高さ13m未満、軒高さ9m未満
  • 木造以外で、階数が平屋、延面積200m2未満

であることが条件です。

今回の建物は、

  • 用途=診療所+住宅
  • 構造=木造
  • 階数=2階建て
  • 延面積= 114.51m2 < 200m2

となって、4号建築物としての申請となりました。

既存建物の解体

工事契約締結後、すぐに既存建物の解体工事が着手されました。既存建物は両隣の建物と連結していて、その連結部分を丁寧に除去して両隣の建物の連結部の養生を確かにしてから、本格的に解体工事が開始されました。

外観色彩の検討と決定

工事が着工したと同時に、建物外装の実際の材料色彩を決定するために外観色彩がパース (完成予想図) と材料サンプルをご覧いただいて比較検討の後、選定されました。

地鎮祭

既存建物が無事解体撤去されて、敷地が更地になり、地鎮祭が行われました。

当日に祭壇が組み立てられて、神主様のお取計らいで、神式により式が執り行われました。

    地鎮祭の詳細記事は こちら ▶︎▶︎  「大磯内科医院併用住宅建替えの地鎮祭」

地縄張り建物位置確認

敷地が更地の状態で、地面に縄を張って、建物の位置について施主様とともに確認しました。

実際は敷地境界ポイントからの建物の離れ寸法の確認と外壁の位置の確認となりました。

地盤調査と地盤改良補強工事と地盤保証

地鎮祭が終わり、地縄による建物位置確認がされた後に、地盤調査が行われました。調査方法はスウェーデン式サウンディング方式という試験方法です。

建物が4号建築物である場合は、確認申請後に地盤調査を行うことが許されています。その他の建築物は確認申請時に地盤調査結果報告と共に地中基礎の下部の支持地盤への地業の方式を設計し提出しなければなりませんが、4号建築物は確認申請後 一級建築士の責において実行されて建物が傾かない様にするための地中支持地業が定まることが許されています。

この規制が無いおかげで、地盤調査が工事着工に行えるので、工事契約後に既存建物の解体が可能になります。

もし地盤調査を確認申請の前に行わなければならないとすると、ずっと以前に既存建物は解体されて、地盤調査が行わなければなりません。

調査の結果は、地面直下は軟弱地盤の層があり、支持地盤面までは地面から約3m下部ということが判明しました。そこで、鋼管タイプの杭を地面に支持地盤面まで差して、その上に建物基礎を載せることで、建物が傾かない様にする地盤補強工事=地業工事が行われました。

基礎コンクリート工事の鉄筋配筋検査

建物の構造骨組みが地面から立ち上がるとき、地面には基礎が設けられてその上に構造骨組みが載せられます。基礎は土面に触れるので、水分で腐らない材料=鉄筋コンクリートで造られます。これは如何なる構造骨組みでも共通して、基礎は鉄筋コンクリートで造られます。

鉄筋コンクリートは、コンクリートの塊の中に鉄棒(鉄筋)を挿入して、コンクリートが割れないようにするために設置されます。

この鉄筋はコンクリートが流し込まれて固まってしまうと、きちんと入っているのかどうか分からなくなってしまうために、はじめに鉄筋が組み立てられて、その形や本数が設計図の通り組まれているかを検査します。これを鉄筋の「配筋検査 (はいきんけんさ)」と呼んでいます。

この配筋検査は厳正に行われ、検査に合格しないと、コンクリートは流し込めることが出来ません。

上棟(木造骨組み建て方)

鉄筋コンクリートの基礎が造られて、固まって強度が発生した後に、その上に木造骨組みが組み立てられました。

木造骨組みは、一気に(即日に)組み上げられます。この組み上げる作業をを「建て方(たてかた)」と呼んでいて、組み上げられることを「上棟(じょうとう)」と呼んでいます。

大工さんがたくさん集まって行われる建て方は無事上棟し、作業後施主様から感謝のお言葉をいただきました。おめでとうございました。

 上棟の詳細記事は こちら ▶︎▶︎ 「湘南大磯内科医院の建て方上棟」

断熱材工事

建物骨組みが立ち上がり、屋根面、外壁面が塞がれると、建物の外側の空気の暑さや寒さを内部に伝えないようにするための断熱工事が始まります。

屋根外壁のウレタン吹付断熱材

屋根面の裏側、外壁面の内側に断熱材を設置します。断熱材自体は中に沢山の細かい気泡を含んだモノで、今回はウレタン樹脂の気泡発泡材を混ぜた断熱材を屋根面の内側面、外壁面の内側に連続して吹き付けて、断絶のない断熱面を構成します。

板状の材料ではなく、液体状の材料を面にスプレーの様に吹き付けるのは、出来た骨組みが平坦ではなく凸凹していて、板材を連続的に貼り付けるのは作業的に中々困難で、スプレーを吹くように液体を吹き付けると一様な断熱面になれるからです。液体は吹き付けられると直ちに発泡して膨張します。

床下スチレンフォーム断熱材

屋根や外壁面に比べて床下は凸凹面が少なく、逆に下方に面する板材が無いので、骨組みの一番下に敷かれる土台の中を、板状の断熱材で埋めて行きます。

外壁窓ガラスの透明不透明の確認

外壁面に板が貼られると、開口部窓ガラスがはめられます。そのガラスについて、透明か不透明かの確認を行いました。

外部から内部を容易に覗かれたくない場所、診察室、トイレ、スタッフルームなどは不透明のガラス窓にして、眺望を楽しむ窓は透明なガラス窓にされました。

電気設備工事

電気設備は暮らしの中で機器を作動させるためにもとても大事な設備電源です。設計中にいくら細かい検討をして、設計図に電源コンセントや照明スイッチ、通信用コンセントの位置を定めても、現地で建物の形が現実的に現れると、具体的な動作や行動方法が明確になって必要なコンセントやスイッチの必要な位置や場所がより明確になります。

ですのでたとえ設計図にコンセントやスイッチの位置が記載されていても、改めて現地にて施主様本人に立ち会っていただいて場所を定めていただいています。

今回も同様に内部の壁の位置がおおよそ定まったときに、現地にてコンセントやスイッチの位置や高さを定めていただきました。

医院と住宅の電気水道光熱費を子メーターを設置して分離計測

建物は1階が診療所、2階が住宅、という形を取っています。その際に、医院と住宅の電気使用量料金を明確に分けるために、引き込みメーターは一つにして、内部で医院と住宅の電気の配線を分離して、かつ電気使用量を図るために子メーターを設置して分離して計測できるようにしました。

院内ネット通信環境有線無線LAN配線設備の検討

内科医院ではインターネットによる通信設備について、有線のLAN配線を必要とする部分と、無線LANで利用できる部分があって、明確に統一できない過渡期です。

そこで、有線のLAN配線を必要とする場所を最小限にして配線して、取り出し口コンセント設置する場所を定めていただきました。

固定電話やファックスも利用され続ける状況で、その置き場所をご検討いただきながら配線とコンセントの位置を定めていただきました。

照明スイッチの位置、赤外線センサー

最近は照明のスイッチが手動で ON/OFF するものに加えて、人が近づくことで ON/OFF する人感赤外線センサーも一般的になりました。

そこで、手動で ON/OFF する照明器具と、人感センサーで ON/OFF する器具を分けて、手動スイッチの位置を詳細に定めていただきました。

医院の最初および最終に出入りする際の、照明器具全体を1か所で ON/OFF 出来る場所も定めました。

院内の照明の色温度

院内の照明器具の色についても選定されました。

待合室

患者様が滞在する場所(待合室、受付カウンター)は、温かみのある温白色にされました。

診察室

診察室やスタッフルームは、色彩を正確に見れるように昼白色が選ばれました。

吹き抜け受付待合室の換気設備と空調エアコン設備

高天井吹き抜け空間の待合室の空気環境は、

  • 機械換気は天井面に換気扇、自然換気は天井際に排気用窓
  • 空調エアコンは、壁掛けエアコン

が設置されています。

さらにその大容量の空気を循環させるために、検討の結果、天井中央にシーリングサーキュレーションファンが設置されました。

落ち着きをテーマにした個室インテリア室内装床壁天井素材色彩

2階のリビングはクリニックの白で統一されたインテリアとは逆に、安らぎと落ち着きをもたらす空間を目指された色調にされました。

床は濃茶色のフローリング、壁面は濃紺、天井は濃い網代材が施されました。扉や梁などのは床のフローリングと同調にして、全体はゆったりとした印象の空間になれました。

ホームページの開設

設計および工事中からホームページの開設の重要性を説明させていただいていました。代替わりされる医師先生は、ご自分でホームページを制作されて公開されました。

留意すべき点についてご質問いただきましたので、患者様の立場になって(ホームページを見る立場になって)お応えしました。

  • 内科クリニックを探している人は、「自分の症状・痛み」と「大磯 もしくは 湘南」などと検索すると思われるので、単にホームページを開設しただけで満足せずに、医師先生が行った診療内容を記事にして、そのタイトルに「症状・痛み」を載せること
  • 各ページには、常に 医院名・電話番号・住所地図(グーグルマップでナビゲーションが出来る様に)
  • 駐車場があること を掲載すること(可能な限り開いたページだけで 来院できる情報を取り揃える)
  • 文字は大きく(14ポイント以上)
  • 表示はシンプルに
  • サイト全体の色調は、どのような色調のときに来院患者様が多かったかを比較検討すること

を説明させていただきました。

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