新しい墓地納骨堂計画許可申請と合同埋葬墓設計

横浜の中心部から西北西の丘の上に一面にお墓が広がる「久保山墓地」と呼ばれる 横浜市営の墓地を主にする墓地があります。

その墓地の周囲をお墓に囲われているお茶屋様の隣りにあるお寺の土地に、納骨堂 (合同墓地) が新たに計画されました。

合同墓地の需要

久保山墓地にお墓参りをされる皆様から「墓仕舞いをしたい。納められているお骨を預かってくれる所が無いか?」という相談が、墓地の管理やお世話をされているお茶屋さんに度々ありました。

困ったお茶屋さんはお寺さまに相談し、お寺さまが納骨堂を設けて、それまでお墓にお納めされていたお骨を預かって下さることになりました。

新しく墓地を設ける

新たにお墓を正式に設けるには、敷地がある市町村の許可を得なければなりません。

設置する主体は、宗教法人もしくは公益法人の資格が必要です。

今回は横浜市西区ですから「横浜市墓地等の経営の許可等に関する条例」の許可が必要となり、担当する医療局に事前協議に伺いました。

納骨堂か? 墓か?

今回は求められている施設は「親族がなくて墓がなくなる」とか「墓がない」お方のお骨のお納めであったことから、皆で合葬する「納骨堂」になりました。

納骨堂新設の許可申請事前協議

横浜市医療局の窓口ご担当様との度重なる協議が行われました。(納骨堂が設置できるか?、設置の許可基準をクリアできるかの確認協議)

  • 宗教法人が行う事業であることの確認
  • 墓地か納骨堂か、施設整備基準を満たせるかの確認(施設整備基準が大きく異なる)
  • 役所内の各関係各課への周知説明による内諾
  • 周辺住民に理解が得られるかどうか(迷惑施設としての理解をいただき、紛争なしであることを前提とする)
  • 接道の確認(建築基準法をクリアできるかの確認)
  • 雨水や汚水の処理方法の確認

等々様々多岐に確認が行われました。

計画の標識設置

事前協議を経て、設置内容に問題が無いことが確かめられて、「納骨堂設置計画」のお知らせ看板を当該地に設置出来ることになりました。

 

標識設置は、周囲の住民の皆様に納骨堂を設置する予告をするためで、突然に工事を着工するのではなく、周囲の方々に理解を得た上で設置する必要があると行政が求めている方法です。

周囲住民の方への説明

周囲の住民の皆様に「納骨堂設置計画」を説明に伺うことになりました。

敷地の周囲は一面お墓で、ご説明に伺う対象は 周囲のお寺さまや お茶屋さまでした。

皆様 納骨堂設置にご賛同くださり、説明の結果を横浜市役所医療局に報告しました。

許可申請

納骨堂設置に関わる基準に合致し、周囲住民皆様の異議がないことで、横浜市長の許可が下りました。

横浜市許可:令和5年9月12日横浜市医生指令第9号

建築基準法の未認定の道を法42条2項道路に認定してもらう相談協議

敷地の前面の道路は、もともと建築基準法で認められた道路ではありませんでした。隣の敷地の前面道路までは、建築基準法の第42条2項道路として認められていましたが、今回の敷地の前面の道路は単なる「道」でした。

横浜市の建築指導課に相談し、建築基準法の道路として認定いただくよう相談しました。

相談した部分は、道路として認められている道路に隣接していることと、かなり長い期間道路として利用されていることを横浜市も把握していて、道路として認めても再整理が不要な状況であることが確認できたため、建築基準法 第42条2項道路として認定を受けることができました。

確認申請

横浜市医療局の納骨堂設置の許可、建築基準法 第42条2項道路への接道、が確認できたため、建築確認申請が提出されました。

納骨堂の構え

納骨堂の形は、以下の条件のもとに整えられました。

  • 鉄筋コンクリート造にする
  • 規模は平屋
  • 納骨室、事務室を設ける(横浜市の納骨堂設置基準による)
  • 拝礼スペースを設けて、屋根をかける

お寺の施設ではありますが、実質的にはお寺本堂の境内ではなく離れた墓地の中の土地であることと、鉄筋コンクリート造であること、どなたにも好みが偏らないように、シンプルな構えを目指すようご希望がありました。

納骨室と事務室

納骨室の広さは、運営上の納骨の方式と予想されるお骨の量、及び敷地の広さから来る確保できる面積について定められました。約13m2、8畳ほどです。

事務室は必要最小限のスペースが確保されました。

拝礼の構え、屋根と壁と床

納骨をされたご家族が拝礼をされる構えが検討されました。

具体的な偶像は求められませんでしたが、故人を偲ぶ気持ちをお支えするために、屋根を設けて雨を避けられるようにして、献花台へ誘導するように側壁を設けました。屋根にトップライトを切って陽射しが壁面に落ちるようにして、天を感じられるようにしました。床の仕上げは道路から離して周囲を砂利敷にして、敷石を渡って納骨堂に辿り着く様にして納骨堂が現生とは離れていることを表しました。

屋根庇

建物本体の周囲には屋根庇が深く突き出した格好になりました。

これは建物周囲の所作を雨水に濡れずに出来るようにするためでもありますが、建物本体外壁を雨水で濡れさせないためでもあります。建物外壁の長寿命を実現するためです。

コンクリート打ち放し

納骨堂はコンクリート造で、外壁表面もコンクリートをそのまま表しにする方針になりました。

コンクリートの堅牢さを感じ取っていただくために、小さな幅の杉板を組み合わせて組み立てられた型枠によるゴツゴツした表面仕上げが採用されました。

お供え物の献花台

拝礼に訪れる皆様は故人にお花やお線香、もしくは好物をお供えされる方が多いため、献花台を大きくしてお供えいただくことにしました。

中央にお線香入れを置いて、左右にステンレスの花瓶が台に挿さるようにしました。

卒塔婆掛け

故人へのお手紙とも言われる卒塔婆は法事でお寺に来たときにご住職から授かります。

故人に向くように側壁の背面に立て掛けられるように受け金物が設置されました。

アプローチ踏み石と周囲の砂利敷

納骨堂建物は前面道路から後退して建てられています。

道から納骨堂の拝礼場所には、自然石の踏み石が敷かれました。このアプローチ踏み石を渡って拝礼する床に乗ります。

アプローチ踏み石の周囲は豆砂利が撒かれました。ただ豆砂利を撒いただけでは、砂利の上を歩いてしまう方の歩行に不便なので樹脂を混ぜて固められました。透水性があり降った雨は下の土に染み込むようになっています。

施設名称サイン

納骨堂の名称は「天徳院 久保山 納骨堂」で、自立側壁の壁に明朝体の縦書きでステンレスの切り板で表示されました。

道路からわかりやすく読めることと、拝礼の際には気にならないようにしました。

周囲手すり塀

納骨堂として囲われているための安心感と雨水の流入を遮るためにも、周囲に手すりとなる塀が巡らされました。

塀は視線は、遮ることのない高さで、コンクリートブロックで造られました。

横浜久保山納骨堂墓地

ペットの墓地

敷地内にはペットのお墓も併設される予定です。

地盤調査

設計の最終段階で、地盤の硬さを測る地盤調査が行われました。

地業設計

地盤調査の結果、地表面下の約4メートル下に建物の重要を支えてくれる硬い地盤面があることがわかりました。

土壌をセメントと混合して硬くする地盤改良は深さ2メートルくらいまでしか施工が出来ません。今回は建物の下に杭を打って支える深さであると判断されて、基礎の下の支持地盤面までの杭を設置する方針設計になりました。

地盤改良・杭

鋼管の杭が剣山の様に短い間隔で打設されました。

鋼管の先にスクリュー翼が付いていて、杭を回転させてスクリュー翼が回転して土壌を掘り進めて行きます。

基礎鉄筋配筋検査

杭の打設後、地下基礎の土壌が掘削されて、鉄筋が組み立てられました。

鉄筋の種類と太さ、本数と間隔、端部の定着処理などを目視で検査し、合格しました。

建物の表面仕上げや造作

納骨堂建物の外壁をはじめとする表面仕上げ材や造作について、納骨堂としての調和を計りながら拝礼施設の構えが整えられました。

アプローチ床石

道路から拝礼スペースへ向かうアプローチは自然石の飛石が敷かれました。

 

アプローチ石の左右は豆砂利が撒かれるところを豆砂利を樹脂で固めた透水性の舗装になりました。ご高齢の参拝者様への配慮です。

杉板型枠のコンクリート打ち放し仕上げ壁

拝礼スペースへの誘導と囲いのための壁は、幅の短い短冊形の杉板を組み合わせた型枠のよるコンクリート打ち放し仕上げになりました。杉の板目の模様がコンクリート打ち放し面に表れます。コンクリートの固さと力強さを表すに相応しい見た目と言えます。

 

壁はアプローチ床石に沿って拝礼場所に誘うように立ち、屋根を支えています。

はつり仕上げ風の自立コンクリート壁

道路に平行に拝礼スペースを囲うように自立する壁は、表面をはつり取ったようなゴツゴツとした仕上げを施しました。コンクリート打設時に表面に固結遅延材を施して、表面のコンクリートを洗い落とすと、はつり取ったゴツゴツした様相になります

 

壁には納骨堂名称が付けられて、納骨堂本体の骨組みとは独立した部位となっています。

トップライトによる拝礼演出

拝礼スペース正面には、上部に天窓トップライトを設け、壁を少しくり抜いて、お日様の明かりが拝礼スペースに届くようにしました。

 

拝礼献花台

仏式の納骨堂ですので、お花とお線香をお供えする方が多くお見えになります。

拝礼スペースには献花台を設けました。

 

献花台には、お線香置きと、お花を供える花瓶が台に挿さるようにしました。

合同納骨堂ですからご参拝が複数になると思われて、花瓶は複数設けられました。

囲障壁手摺

納骨堂を周囲と区画するために、コンクリートブロックを積んで手摺高さにして周囲と区画しました。

 

コンクリートブロックの補強を組み込ませて、擁壁の石積みの「ブラフ積み」のように見せました。

https://furukabe.com/bluffmsnry.html

https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/machizukuri-kankyo/toshiseibi/toshin/kannaikangai/yamate/yamate.files/0001_20180928.pdf

建物名称看板サイン

納骨堂名はその位置について様々検討されましたが、検討の結果 自立しているコンクリートの壁に 縦書きで「天徳院 久保山 納骨堂」と厚みのあるステンレスプレートで表示されました。

 

完成検査と構造設備基準検査

建物が完成しましたので、建築確認検査機関の建築基準法の完成検査を受けて合格し、検査済書が発行されました。

次に横浜市医療局の検査を受けて合格し、構造設備基準適合確認を受けました。

横浜市許可:令和5年9月12日横浜市医生指令第9号

開眼供養

法令に関わる役所の検査合格後、施主である天徳院ご住職様による開眼供養が行われて、晴れて納骨堂の運用が始まりました。

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