横浜のお客様が所有する鉄筋コンクリート造の賃貸共同住宅マンションの、外壁改修工事の監理業務をさせていただきました。建物は完成してから10年以上が経つ建物ばかりで、5件ありました。
ご相談をいただいてからは、毎年一度現地にて改修工事の要否を判断する検診を行い、改修工事は本当に必要になるまで我慢していただきました。
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全て5件の改修工事が終了してわかったことでた、建物の状況により材料が傷まないもの、傷みやすいものの傾向が多少でも分かったことがありました。
改修工事費用を抑えて寿命の長い賃貸建物を実現するためにも、しっかり分析して蓄積して活用させていただきたいと思います。
屋根防水
鉄筋コンクリート造の建物では、屋根は平らな屋根(陸屋根)が多く、5件のうち4件が平らな屋根(陸屋根)でした。
アスファルト防水+押えコンクリート
5件のうち1件にアスファルト防水の屋根がありました。使い方として、屋上に人が上がる使い方をする屋上で、アスファルト防水に外断熱材が設置されその上にコンクリートを設けて、屋上を自由に歩くことが出来ます。
押えコンクリートがあるおかげで、落下物や日射からも防水層が守られていて、劣化が進みにくい良好な環境にあります。よって今回も改修工事は行いませんでした。
そもそも、アスファルト防水+押えコンクリート は、改修がほとんど不要で、工事当初のコストは高くとも、メンテナンス費用が0になるので、費用対効果は高いと言えます。
シート防水
人が歩行しない屋根で、広く平らな屋根面のときは、有効な防水工法です。シート状の面材を絨毯を敷くように設置します。通常はシート防水はその上部に保護材を設けないので、直接落下物が当たり日射も受けます。温められたり冷まされたりするので伸縮し、経年すると硬化し伸縮に耐えられなくなりヒビが入り、交換が必要になります。
工事当初のコストが比較的安く済むので採用されることが多いですが、10年~15年経つと交換が必要なことを前提にしておくべきと思います。
塗布防水
屋根に人が上がらない部分で、屋根の形が凸凹が多い部分に適している防水工法です。塗料を塗布する防水なので、日射や落下物の影響を受け、寿命がある防水です。
工事も容易で、コストも安価なので当初の工事には採用されやすいですが、交換改修を前提にしなければなりません。
防水の工法選びは、当初の工事のコストもさることながら、建物が寿命を迎えて建替られる時までのコストを勘案して選ぶべきと思います。
外壁タイル
外壁タイルの改修を行う範囲の決定は、打撃試験を行って、タイルが下地コンクリート面から浮いていないかを判断して決められます。
5件のうち4件は、さほど浮いているタイルの予想(全体の1%~5%)の範囲で、浮いているタイルも1個か2~3個の単位での浮きが多いのですが、1件のみは浮いてしまっているタイルが10個前後の広い範囲で浮いているものがありました。
原因と考えられるのは、タイルを貼る下地の部分である構造体鉄筋コンクリートを造るときに、コンクリートを流し込む際の型枠がペンキが塗られたコンクリート打ち放し仕上げ用が使用されたようなピカピカのコンクリート面になっており、タイルの接着剤の固結が緩く剥がれやすくなっているようでした。
当時の工事者としては、精度の良いコンクリートを造ろうと思って行ったものかと思われますが、本来は表面が少し粗いほうがタイルの接着剤の固結も強いと考えられます。
そこで今回浮いたタイルのコンクリート面は、粗い紙ヤスリで表面にザラつきを持たせた上で、タイルを貼ることにしました。
外壁塗装
風雨が当たる外壁構造体に、塗料を塗っている面も多くあります。検診を行うと、当初の工事では光沢のある塗装面と思われる面が光沢がなくなり、部分的にヒビが入っていたり、粉を吹いているような面もあります。そうなると改修塗替えの時期となります。
特にひび割れを起こしている部分は、構造体もヒビが入っている可能性が大きいので、ヒビ割れ部分には樹脂材を注入して、雨水の進入を防ぐ必要があります。
雨水が構造体の中に入ると鉄筋が錆び始め、鉄筋が錆びると膨張し、コンクリートを爆裂させてしまい、構造強度を維持できなくしてしまうからです。
外装材の目的
建物の外装材、例えば石貼り、タイル貼り、金属板貼り、塗装などが施されるには意味があります。全体のバランスと調和を図って、さらには長期のメンテナンスコストも考えて選ばれるべきでしょう。
外観見た目
建物の種類、建主様の希望 を汲んで、洗練された財産として認められるように選ばれます。建設コストに直接影響するとともに、外観の印象を決めるものなので、慎重に検討されるべきです。
特に賃貸物件の場合は、入居希望者の印象を決めたり、家賃の査定に大きく影響するものなので、見た目とメンテナンスコストも含めて選択するべきものです。
構造体の保護
構造体は風雨に晒されるものなので、外側に何かを施さなければ常に構造体が劣化するモノが飛んできます。一時期、コンクリート打ち放し仕上げ(何も貼らないでコンクリートが直に見えているもの)が流行しましたが、この場合はコンクリートを多少増して造り、本来必要なコンクリートは中にあるようにしました。
タイルも塗装もコンクリートの構造体が劣化しないようにするために貼られたり塗装されています。
改修工事の時は、表面の見た目の劣化よりも、構造体に劣化を及ぼしていないかの判断で改修工事を行うかどうかの判断をすれば良いと思います。
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