東京の設計事務所「古橋建築事務所」様が設計・監理をされた計画「大学キャンパス内の教室棟 と 体育館+屋内プール」の体育館+屋内プールについて、実施設計から工事監理までを担当・協力をさせていただきました。
地下の水位が高い
設計段階で行われたボーリング地質調査の結果から、建設場所の地下水位は、地上面から深さ3メートル弱の深さにあることがわかりました。
建物は地下2階で、地面から約11メートルの深さの建物で、地下水は建物の地下1階の部分に当たります。
地下水があると、地下水はその高さの部分だけでなく地下建物全体に水が当たるようになります。
地下の構造体は完成後に変更を加える事は困難なので、はじめの工事で地下水の侵入を防止する対策を造っておかなければなりません。
地下水の対策は多数の対策を行って水の侵入を止めたり、万が一水が侵入してきたときの場合に容易に排水できるようにしておく設計と確実な工事が必要になります。
今回は以下の方法で多重の対策と排水の仕組みを整えました。
仮設擁壁SMWで止める
地下建物は、地下の土を掘ってそこにコンクリートの建物を造ることで、周囲の土圧に潰されないようにします。コンクリートの建物を作っている最中は、周囲の土圧を留めておかなければなりません。
建物の深さが浅い時は、親杭横矢板工法で周囲の土を止めておけますが、今回の建物のように地中11メートルの深さになると、SMW工法による地中連壁が必要になります。
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SMW地中連続擁壁は、その名の通りコンクリート壁が連なっているので、完全な地下水の止水は期待しませんが、多少の止水性能を期待します。
今回の掘削工事でも、SMWの設置後掘削が進められ、根切り底が見えた時、周囲SMW擁壁からの出水は無かったため、擁壁で止水が行なってくれる多少の期待を寄せました。
先やり工法の地下外壁防水で止める
地下建物の平面的な大きさに対して敷地に余裕があって、地下建物の外壁の周囲に余裕を持って土留めの擁壁が設けられる場合は、擁壁と地下建物の外壁に隙間ができるので、地下建物の外壁面に防水工事が施工できます。
地下建物の構造体が出来上がって、地下建物の外壁に施行する防水工事を「後やり工法」と呼んでいます。
今回の敷地には余裕がなかったので、地下建物の外壁と土留め擁壁の間に隙間は設けられませんでした。このため上記の「後やり工法」は選べませんでした。
土留め擁壁に沿って地下外壁が造られる場合は、土留め擁壁に向かって防水工事を施し、防水面に地下外壁を造る方法があります。これを地下外壁防水の「先やり工法」と呼んでいます。
今回の工事では、先のSMW擁壁による止水効果が見られたので、地下外壁の外周部の防水は行わないことにして、内部の壁面に防水を施すことになりました。
外壁で止める
地下建物で地下水が建物の中に侵入してくると言う事は、地下建物の外壁のどこかに穴や隙間があると言う事です。逆を言えば、地下建物の外壁に穴や隙間がなければ、地下水が内部に侵入してくると言う事はありません。
地下外壁に防水を施す施さないに関係なく、地下の外周壁のコンクリートを蜜実に打設することは非常に重要なことです。
土圧反力壁のために、地上と比べると厚くなる地下外壁はコンクリートの周り込みが容易ではありますが、外壁面のコンクリート打設状況が目視できないので、コールドジョイントやジャンカを造らない慎重なコンクリート打設が求められます。
打継ぎ止水板で止める
鉄筋コンクリートは原則的に一層の階ごとにコンクリートを打設して行きます。
当然、下の階と上の階のコンクリートを打設する日時には隔たりがあります。
コンクリートが固まった日時が異なれば、上下のコンクリートはくっ付いて一体にはなりません。
打設日時が異なるコンクリートの境い目は「打ち継ぎ」部と呼び、厳密には隙間になり(ただし上部からコンクリートが流れ込み、十分に重いので、見えないくらいの隙間です)その部分から外部の水が内部に侵入してくる(染み出してくる)可能性が高くなります。
特に地下階では、外周の地下水が、下方に落ちることなくに壁面全面に掛かるようにまり、打ち継ぎに隙間が有れば土圧とともに押されて地下水が侵入してきます。
コンクリートの打継ぎ部の止水対策は、打継ぎ部が連続するので、下階のコンクリート打設時に 地中外周壁の上端部に連続して途切れ無く上端部から突き出るように樹脂製の止水板を設置します。
上階のコンクリートが打設されると、止水板は上の階のコンクリートに突き刺さる様に固定されて、下階と上階を繋ぐ形になります。外周側から打継ぎ部分に侵入して来る地下水をこの止水板で止める役割になります。
内側壁面を塗布防水で止める
地下外壁外側に防水が施工出来ないので、外壁内側面に防水面を施工することになりました。屋根の様に水平ではないので、壁の垂直面には塗布防水が施されました。
将来に出来てしまうかもしれないコンクリートのひび割れから、地下水が侵入してくることに対して、防水材自体が伸縮する材料にして、ひび割れに伸縮追従出来る防水材が選ばれて施工されました。
湧水を室内に入れない
万が一地下外壁から地下水が侵入してきた場合には、その水(=湧水 と呼びます)が地下室内に直接入らないように、外壁に沿って壁を建てます。
侵入した湧水は、外壁内側面を沿わせて下に落とし、さらにその床下のピットに落とします。
湧水を集めポンプで汲み上げ排水する
地下外壁の隙間から侵入してしまった湧水を、外壁内側面に伝わせて、最下階の床まで落とします。さらに床に排水孔を開けておいて、湧水をさらに下の「ピット」に落とします。
ピットに落とした湧水は、ピットの中でも一番深い部分に集められ、そこに用意された排水ポンプで地上に上げられて排水処理される仕組みになっています。
上記のような多重の防水や排水機能によって、地下空間が永く地下湧水の影響を受けないように維持される仕組みを設えています。
関連解説記事リンク—地下—
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