大学キャンパス地下屋内温水プール錆びない材料電気照明器具

地上に体育館、地下に屋内プールを上下に重ねた建物である昭和女子大学の「西体育館」は、「古橋建築事務所」様が行う設計・監理で、そのうちの意匠の設計・監理を担当させていただきました。

なぜ錆びる?

金属(特に鉄)は、酸化還元反応により鉄表面が電子を失ってイオン化し、鉄表面から脱落して行くことで錆びを発生させます。

生じたイオンは酸素により鉄酸化物(酸化鉄)、または水により含水酸化物(水酸化鉄やオキシ水酸化鉄)に変化して鉄表面に堆積します。

酸素や水があるところに鉄を放置すると、錆びを生じさせます。

特に塩化物イオン(Cl−)に触れると鉄の錆びの進行は増大します。

プールにはプール水の消毒のために塩素水が混ぜられていて、塩化物イオンが発生します。これが鉄と反応して、鉄には錆びを生じさせることになります。

錆びるモノ

プールの内装では、金属が使用される箇所があります。

  • 手摺
  • 配管
  • ダクト
  • 照明

これらは、強度上、法令上、性能上から金属で造られる必要があるモノです。

しかし、プールの水と消毒塩素の影響で、鉄で造られると錆びてしまいます。

錆びると困ること

プールの内装では鉄でモノを造ると直ぐに錆び始めてしまいます。各部が錆び始めて、錆びが進行すると、

  • 錆がプールの水に流れるようになる
  • 手や体に触れて肌を傷める
  • モノ自体が故障する

などが起こり支障を来たします。

なるべく他の場所に設置する

そこで鉄が錆びないようにするためには、後に記すように、錆びない材料でモノを造ることが対処の方法のひとつですが、どうしても錆びない材料で作られていない場合もあります。

その様な場合は、その機能を隣りの部屋などに移して、プールの水に直接触れない工夫も、鉄を錆びさせない方法のひとつです。

今回では、消防設備のうち、屋内消火栓箱が内部や配管に鉄が使用されていて錆びてはならないモノでしたので、隣室に移して設置しました。

錆びないプール内の部品や器具

通常の内装では鉄で作られているモノで、プール内で設置されるこてから錆びない材料で作られているモノがあります。

ステンレス

錆びない鉄という名前そのままの素材です。(正式には ステンレススチールと言います)

扉、手摺、配管、排水溝の縁、水切り金物、天井の下地組み、などで使用されています。

樹脂プラスチック

プールでは利用者が水着を着用し肌が露出すると言うこともあり、直接肌が触れる部分には金属でなく樹脂プラスチックが使われます。

特にプールの水の中の床や道具、プールサイドの排水溝の蓋のグレーチングなどに使用されています。

照明器具

プールでなくても水や湿気の多い場所の照明器具は、水や湿気が器具の中に入らないように密閉された函体の中に電気配線や照明本体が内臓されます。水や湿気が不用なところで電気を流したり漏電させるためです。

プール内では水と塩素の影響により通常の器具の函体を錆びさせて、函体の内部に水や湿気を侵入させてしまうので、函体を錆びないようにして、さらに密閉度を高くした器具が製作されています。

器具は天井面や壁面に埋め込む様な型のモノは無く、天井面や壁面に直に取り付けて器具が露出するモノばかりです。

天井から突き出たコンクリートの梁によって照明が拡散しないで絞られてしまうことから、照明を天井ではなく壁面に設けることにしました。

壁面に器具を取り付けると、取り付け金物と壁面の間に水が溜まり壁面を伝う恐れがあったため、器具を納めるステンレス製の箱を壁面に埋め込んで、器具を設置しました。

壁に埋め込んだステンレス製の箱は、箱内に入った水や、壁の上から伝わって来た水を、箱の下面に付けた水切り金物に集めて床に直接落とすようにして、下部の壁面に伝わり落ちないようにしました。

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