豊洲市場問題の盛土と地下空洞ー建築家の疑問

不可解な報道に疑問

東京の築地市場を豊洲新市場に移転する際の、豊洲の土壌汚染対策と建てられた施設の地下構築物で、とんでもない施策が行われたと捉えられる様な報道が、小池百合子氏が東京都知事になってから続いています。ただどうしても建築実務を行なっている者からして不可解な報道が多いので、部分的ですが一般論として語っても問題ない範囲で「誤解を正して」おきたいと思い説明記事にしました。

なお都議会や行政の経緯、詳細な技術的検討結果経緯については、正式な公表や説明に準じて推測せず、こちらでは飽くまでも一般論でお話しさせていただきます。

4.5mの盛土

土壌汚染対策として既存の土地に4.5mの盛り土をしたとのこと。高さ4.5mです。木造の建物で言えば、1階と半階分くらいの高さです。ある島の地表の高さを4.5m変えるほど盛るのです。土壌汚染対策とはいえ、この盛土の厚みには誰も疑問を持たないのでしょうか?

既存の土中に有害な物質があって、それを地表に出さないための方策として間違いはないのでしょうが、そこにある有害な物質を浄化するわけでもなく封じ込める方法ならば、もっと簡易な対策があっても良いのではないかと思えます。例えば土壌汚染対策に必要な厚みのコンクリートで覆うことで、桁違いに安価で簡易な方策を選べると考えます。

島に盛土で高さを4.5m上げる費用は、コンクリートの床を造る費用と較べればとてつもなく高額な費用で、何故このような方策が選ばれたかを検証する方がよほど大事なことかと思われます。合理的で止むを得ない理由がなければ、あり得ない無駄です。単純にその分の土を近郊のどこからか削って豊洲に運び込んだのですから・・・。

盛土は建物には「無用」

豊洲の新しい市場としての活用を行うとき、はじめに土壌汚染対策(4.5mの盛り土)を行い、それが終わってから上部の施設を造ることが、正しいと報道されています。

ここで建築の技術的な正論として、建物の下部にある盛り土は、建物の構造にとっては「無用の長物」であることを申し添えておかねばなりません。

建物は、建物下部の「基礎」をコンクリートで造り、その基礎を固い地盤の上に乗せて、地震で地面が揺れても、風で圧力を受けても、傾いたり沈んだりしないようにしなければなりません。

この場合に「盛土」は、建物を乗せる固い地面にはなれません。「盛土」地面はある意味フワフワで、どんなに上からたたいて締め固めをしても、軽い木造建物でも心配なくらい軟弱な地盤なのです。

地表面下部が軟弱な場合、地質調査を行って地中の固い地盤面を探して、建物の底面と固い地盤面の間を「固い何か」で支えて、建物が傾かないようにします。

「固い何か」とは、

  • 杭(固い地盤が深いところにあり 棒状の材料を 地中に挿して建物を支えるもの)
  • 地盤改良(固い地盤面が浅いところにあり 柔らかい地表土壌を固くするもの)
  • 地下建物(地下全部を部屋にして、固い地盤面まで建物を造ってしまうもの)

などがあります。

この「4.5mの盛土」は、施設を設計したり建設する立場からすると「無用の長物」なのです。

なぜ地下空洞がある?

建物には必ず地表面から下の地中に埋まる「基礎」があります。これは木造でも鉄骨造でも鉄筋コンクリート造でも共通です。またこの「基礎」は原則鉄筋コンクリートで造らねばなりません。そしてこの「基礎」は、上部構造が大きくなればなるほど大きく深くなりますが、なるべく小さくして建物の重量が重くならないようにします。(重量が重くなると、「杭」がさらに頑丈なものにならなくてはいけなくなります)

木造2階建てのコンクリート基礎は高さ70センチくらいになり、2階建ての鉄骨造でも高さ2メートルくらいにもなります。ただしこの「基礎」は全面にコンクリートがある訳でなく、井桁状に組まれた梁(はり)で構成されていて、梁で囲まれた部分は重量の軽減のために「空洞」になっています。(建築用語でこの地下空洞を「ピット」と呼んでいます)

建物を何も無い更地の状態から造り始めるとき、はじめにこの「基礎」を造るために、「基礎」の底の深さまで土を掘ります。掘られた土は、敷地から運び出されます。この土の量が多ければ多いほど、工事費がかさみます。

また建物を支えられる固い地盤が地表面より深い場所にあるとき、この基礎の下に杭を挿して固い地盤まで届かせて、杭の最上部に「基礎」を載せて地表より上部の建物を支えなければなりません。

このときに地表面の下や基礎の周囲にある「土」はあまり役に立ちません。しかし「基礎」を造るにはこの土を掘って敷地の外に運び出さねばなりません。

そこでもし、この「土」がはじめから無くて、はじめにコンクリートの「基礎」を「盛土」がされる高さで造り、「基礎」が出来た後に建物周囲に「盛土」を行えば、少なくとも「基礎」の部分の土は豊洲に持ち込まなくて済み、その分の相当な金額が安く済むと考えます。

報道では「盛土がされずに、地下に空洞がある」とされていて、疑問視されていますが、これは合理的で安全で一般的な方法なのです。

逆に、もし「4.5mの盛土が完了した後、建物の工事が始まり、基礎を造るために盛土された部分の土を再び掘って、掘った土は豊洲の外に運び出す」ことになれば、「基礎」が造られた部分の土は都合2度の手間を掛けた(お金を掛けた)ことになる訳です。このような不合理な方法はしません。

当事者と報道と専門家

不思議なのは、上記のような一般的な事柄を当事者(行政や設計者)が一言説明すれば済むのに、誰も説明をせず、もしくは説明があったとしても報道されないことです。そして報道に出演する「建築の専門家」の方も、この常識を知らないのかどうかは不明ですが、何も触れず、どちらかと言うと不安を煽るような質問と回答説明ばかりしています。

改善対策(推測)

ではどうすれば安全な対策になるかは、(飽くまでも推測です)

  1. 「基礎」の一番下にコンクリートの床を造る(底盤というものです)→  汚染物質の上昇を止めるためです
  2. 「基礎」の中に進入した水は、ポンプで吐き出す(汚染物質なら除去処理をしてから廃棄)→  一般的な建物の「基礎」で行われていることです

ただし、なぜ「基礎」の底面にコンクリートの床が無かったのかは不明です。特別な理由があるかもしれません。

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正しい説明と安全な処置がなされ、関係者の安心を得て、問題が早急に解決されることを望んでいます。

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