神奈川県川崎市高津区で 既に建物の配置と大まかな間取りプランが定まったRC鉄筋コンクリート造3階建ての賃貸マンション共同住宅について設計をまとめさせていただきました。
賃貸マンション集合共同住宅
以前にも共同住宅が建っていて、そちらの建て替えでした。賃貸型で若いご家族と独身の方の入居を想定された計画です。
間取りプラン
建物は敷地の広さと都市計画法で定められた建ぺい率と容積率の関係から、3階建ての建物となりました。
間取りプランは、
- 1階と2階は 若いご家族を想定した 1LDK
- 3階は 独身の方を想定した ワンルーム + ロフト
というご方針で取りまとめられました。
壁式構造
構造形式は、
- 共同住宅から鉄筋コンクリート造・・・上下左右の住戸区画を堅く分けられる
- 3階建てから壁式構造・・・大きな柱の代わりに壁の厚みで支えられる
が選ばれました。
駐車場スペース
建ぺい率の関係からどうしても敷地内に空地ができるので、そちらは駐車場スペースとして利用されることになりました。
入居される方の想定も乗用車を所有しているご家族であることや、建物の位置が最寄駅から多少距離があることもあって、必要と想定されました。
入口エントランスアプローチ
共同住宅の出入り口には様々な機能が盛り込まれています。
- 駐輪スペース
- メールボックス
- オートロック自動ドア
これらの機能設備を配置しながらも、スムーズに出入りできなくてはなりません。
動線は直進で往来出来るようになりました。途中に上記の設備が利用できるようになっています。
駐輪スペース
通勤駅の最寄り駅までの往復交通手段として、自転車は多数利用されます。
共同住宅内には住戸数と同数の自転車が駐輪できるようにスペースが確保されました。
オートロック扉の手前に設けられました。
オートロックインターフォンと自動扉
共同住宅の入居者の防犯とプライベート保護のために、建物玄関にオートロック機能=玄関にインターホンを設置して、建物に入場する場合に、
- 入居者は鍵を開けて扉を開錠
- 来訪者はインターホンで入居者と通話して扉を開錠
を行う機能は、必須な設備となりました。
扉は自動の引き戸で開錠されると手を触れずに開けられます。
郵便受箱メールボックス
郵便配達をされる方々が各住戸の玄関扉まで至ることなく、郵便箱メールボックスを玄関付近に設置することが多くなっています。
オートロック機能が付いている玄関扉の横に設置されて、郵便を配達してくださる皆さんはオートロックの中に入ることなく郵便受箱メールボックスに配達できて、各入居者はオートロックの中にいる場所で配達された郵便物を受け取る機能になっています。
郵便受箱メールボックスは「前から入れて、後ろから出す」形態になっています。
入居者は帰宅時に一旦オートロックの中に入ってから 郵便受箱メールボックスの背後に回って郵便物の有無を確かめることができます。
宅急便受ボックス
最近は商品の購入が店頭販売によるものから、ネット上の購入と宅急便配達によって商品を受け取る形も多くなりました。
かつ宅急便によって配達される日中には、仕事などで外出し住戸に不在となることも多く、注文した商品を日中配達される際に直接受け取れない場合が多くなるようになりました。
再配達や集配所に出向いて商品を受け取るのはとても面倒になるので、郵便受箱メールボックスに隣接して宅急便配達品も受け取れる宅急便受け取りボックスが設けられるようになりました。
郵便受箱メールボックスよりも大きくて、入居者が不在の際は、配達員さんは商品を宅急便受け取りボックスに入れます。同時に配達された宅急便受け取りボックスを開ける番号を記入した不在票を郵便受箱メールボックスに投函します。 不在だった入居者は、帰宅時に郵便受箱メールボックスに投函された不在票を見て、ボックスを開ける番号を確認して、宅急便受け取りボックスを開けて商品を受け取ります。
この仕組みによって、入居者が不在でも配達員さんは再配達をすることなく、入居者も集配所に出向く手間がなくなりました。
ゴミ収集場所
日々の生活で出されるゴミは、共同住宅においてはゴミ収集事業所の方針により、建物ごとに収集場所を設ける場合があります。
今回の建物では、川崎市のごみ収集事業所の方針では協議の結果、ゴミ収集場所を設ける義務がなかったため、収集場所を設けませんでした。
近隣の道路上に設置されている。ゴミ収集場所に入居者さんがルールに従ってゴミを出すことになりました。
共用階段
地上から2階及び3階へ上がる階段は、オートロック玄関を通過した先にあります。屋根はありますが 屋外階段で、屋外の共用廊下に通じています。
建物は3階建てのためにエレベーターは設置されませんでした。
共用廊下と設備置場
各住戸玄関に通じる共用廊下も階段同様 屋根はありますが外部です。
共用廊下に面する玄関扉の脇には、エアコンの室外機、ガス給湯器、各設備配管が配置されて、空気に開放する必要があるところ以外は扉で閉じられています。
設備配管パイプシャフト
各住戸で利用される水回り設備の給水管排水管はいずれかの場所を通過して、地上につながらなければなりません。その場所は可能であれば住戸の占有場所から外れた場所に配置された方が、将来のメンテナンスや交換を考慮すると望ましいといえます。入居されている住民の方々への負担を少なくするためです。
設備管は共用廊下に面する設備機器置き場に設置されましたが、一部の設備管は住戸占有場所内にパイプシャフトを設けてそちらに設置収められています。
屋根防水と雨水排水竪樋
コンクリート建物の屋上は普段人が上がらず利用されないことを前提に、屋根防水には費用も鑑みてシート防水が採用されました。
平坦で広い面積の場所には、シート防水が適していると考えておりますが、庇や細かい部材の防水には施工性を重要視して塗布、防水が採用されました。
屋根の降った雨水を集めて排出するためには屋根防水面に排水管=竪樋 (たてどい) をつないで排水します。
この屋根に降った雨水を地上に移す排水管=竪樋 (たてどい) は、建物の内部にされてしまう場合と外部外壁に露出して沿わせる場合がありますが、今回は共同住宅で内部の占有面積を少しでも確保するために外部外壁に露出して沿わせる方式が選ばれました。
外観ファサードデザイン
特定の方のみが利用する住宅や建物=個人様のお好みが建物の外観に表れるもの ではない場合=今回の賃貸住宅などの 利用される方が変化する建物の場合、建物の外観をはじめとする見た目のデザインは、可能な限り時代を超越した「流行り廃り (はやりすたり) 」の無いデザインを目指して、経年や流行を超えて愛されるデザインを目指しています。
建設された年代で流行した姿形や材料による外観デザインは、経年により寂れた外観となってしまい、入居を希望される方々の感情を多少でも落としてしまうことになるからです。
外観の形状を模型を作って確かめる
間取りプランが定まったことに並行して、外観の形状について検討を行いました。
はじめに簡単な色のついていない模型を作って、建物外観の形を表しました。
垂直と水平の組み合わせを基調にして、お施主様に説明させていただき、ご了承を得ました。
パースを作成して色彩や素材を確かめる
形の方針を確認した上で建物外観デザインすなわち表面の素材や色彩を建主様に説明を行う場合は、完成予想図 (パース) を作成してデザインの方針や仕上げ材の風合いを説明しています。
説明においてはこのパースと実際の材料サンプルを用意してご覧いただき、お好みをお聞きして理想の外観デザインを絞っていくようにしています。
磁気質タイルとコンクリート打ち放し仕上げ
外装表面の仕上げ材は、お施主様のご要望を受けて、磁気質タイルとコンクリート打ち放しで構成される方針になりました。
コンクリートの塊とタイルの組み合わせを交互に組み合わせることで、建物外観が単調にならないように変化をつけて全体の調子を整えました。
タイルの色彩についてコンクリートとマッチする色合いを比較検討し、最終的には煉瓦色の色調が選ばれて、バルコニーの手すりや外装窓のアルミサッシの色調が整えられました。
タイル仕上げによる躯体保護
鉄筋コンクリート建物の外装にタイルを貼ったり塗装で仕上げることは見た目の色彩を整えることの意味もありますが、コンクリート躯体の劣化を防ぐための保護材でもあります。コンクリートに直接雨や風が当たらないようにすることで、コンクリートの性能を維持するために、表面に仕上げ材を施して、コンクリートを健全に保つ仕様としています。
コンクリート打ち放しの躯体保護
コンクリート打ち放し面の見た目はコンクリートが露出しています。コンクリートが露出していると言う事は、雨や風が躯体に直接触れてタイルが貼られている面とは異なり、躯体が保護されていないように思われます。
しかしながら、コンクリート打ち放し面でもタイル貼りのような躯体保護が行われていて、コンクリートの厚みを10~20ミリ程度増やして、表面にコンクリートという保護材を付け足すことで、躯体の保護を施しています。
このコンクリートの厚みを増やして、コンクリートを打設することを「ふかしコンクリート」と呼んでいます。
▶︎ 関連解説記事「RCコンクリート躯体構造の表面打ち増しフカシ寸法」
バルコニー手摺と目隠し
各住戸の道路側面にはバルコニーが巡らされていて、道路と室内の間に一皮中間的領域を作って、外部と内部を柔らかく区分しています。
バルコニーの先端には、手すりを設けて、内側への進入や外部への落下を防止し、かつ内部の視線を遮っています。
手すり自体は、細かい縦格子状のシンプルな形状として全体の中で要素を少なくした端正なデザインになることをを目指しました。
住戸間取りプランとインテリアデザイン
3階建ての内部の間取りプランは、
- 1階と2階は 若いご家族を想定した 1LDK
- 3階は 独身の方を想定した ワンルーム + ロフト
というご方針で取りまとめられました。
1階は2住戸、2階は3住戸、3階は4住戸が計画されています。
1・2F、入居者さんの想定と1LDKのプラン
若いご家族を想定の入居を想定した 1LDKは、
- 水廻り室 (トイレ・洗濯脱衣・風呂) は各独立させる
- 対面キッチンのあるLDK
- 個室寝室
です。
3F・ロフトと吹抜け空間
独身の方の入居を想定した ワンルーム + ロフトは、
- 水廻り室 (トイレ・洗濯脱衣・風呂) は各独立させる
- キッチンは水廻り室付近にある
- 吹き抜けのあるリビング
- ロフト
です。
住戸インテリアデザイン
お施主様との住戸のインテリアデザイン検討は、はじめにお施主様のお好み・お考えを知ることから始まります。
お施主様もはじめから明確なお好みがある訳ではなく、多少のイメージを持っている程度ですから、「どのようなお好みですか?」と聞き入るわけではなく、実際の材料サンプルをお見せしたり、これまでに作られた実例写真を見ていただきながら参考にして、検討を進めました。
するとお施主様はお気持ちにあったイメージを部分ごとに話し始めてくださいました。
そのイメージをきっかけに、周辺の材料や色彩の候補を提案して行きました。
階別の内装インテリアの方針
お施主様からいただいたイメージは、初めに扉の素材色彩のイメージでした。
- 3階それぞれ内装デザインを変える
- 内部扉は1階・2階・3階で素材色調を変える
と言うご希望でした。
そこではじめに、お施主様に扉の色彩を選んでいただくことにしました。
3階の各階で間取りプランが異なるので、入居されるご家族の構成も異なります。そちらも踏まえられて扉の色彩が選ばれました。扉の色彩をもとに、床や壁天井の材料の色調が整えられました。
1階
お若いご家族をの入居を想定しているので若々しい感覚の明るい灰色の木目の扉が選ばれて、同時に濃紺の対面型キッチン台と壁の水色のアクセント壁面の組み合わせが選ばれました。
さらにLDKの床は白と黒の市松模様のタイルで遊び心を演出されました。
2階
お若いご家族向けの間取りプラン (1LDK) でも柔らかなイメージで、扉は明るい灰色の扉が選ばれて、えんじ色の対面型キッチン台と壁のアクセントにはクリームオレンジ色の壁紙が貼られました。
こちらもLDKの床は白と黒の市松模様のタイルで遊び心を演出されました。
3階
1ルームタイプで部屋を広く感じていただくために、水色の扉と白の壁面と壁のアクセントに濃紺の壁紙が選ばれました。
省エネ法届出
こちらの建物は省エネ法の届出が必要な規模 (300m2以上) のため、川崎市役所に申請を行いました。
地盤調査 (ボーリング調査)
詳細設計および構造設計に着手する前段階で、地面下部の建物の荷重を支えてくれる支持地盤がどの深さにあるかの地盤調査 (ボーリング調査) が行われました。
結果としては、地表面より14.7メートルの地中深さに支持地盤があることが分かりました。
地盤補強杭地業工事
地盤調査結果から、建物を支える工法は 杭 (=鋼鉄製の円柱棒を地面に突き刺して支持地盤面まで到達させて建物を支える) による方法が選ばれました。
支持地盤の深さが2メートルを超えているためです。支持地盤の深さが2メートル未満の場合は 表層の土を硬くする表層地盤改良という方法が選ばれます。
植栽
地上の道路に面する住戸は道路から内部を見られてしまうので視線を隠すためにも植栽が施されました。
結果、無事完成してお引き渡しが完了して、賃貸事業がスタートしました。
関連解説記事リンク—賃貸収益物件の工夫—
下の各行文は 解説記事の題名リンクです。ご興味ある内容をクリックして解説記事をご覧ください。
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- 賃貸アパートマンション収益物件入居者の満足
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- 木造賃貸アパートの2階を吹き抜けトップライトにして広く見せる工夫差別化
- 木造アパート住戸間の防音遮音界壁区画壁床の千鳥下地グラスウール充填
- 木造2階建て賃貸アパートの1LDK3連引き戸間仕切り
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賃貸アパート・マンション-設計実績説明
下の各行文は 上記と同じ種類の「賃貸アパート・マンション」の解説記事の題名リンクです。ご興味ある内容はクリックして解説記事をご覧ください。写真をクリックすると同物件の他の写真をご覧頂けます。
大家さんの悩み
皆(大家・入居者・周囲住民)の満足
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- 木造2階建て賃貸アパートのメンテナンスの掛からない屋根外壁外装材内装材
- 木造アパート住戸間の防音遮音界壁区画壁床の千鳥下地グラスウール充填
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