建物の使い方が 特定 もしくは 限定できる人達が利用する用途から 不特定の人達が利用する用途 (特殊建築物 建築基準法 別表第1) に変更する場合 (今回は「事務所」から「飲食店舗」と「物販店舗」 (←特殊建築物) に変更する場合) なので、建築基準法 第87条の規定により確認申請手続きが必要になりました。
既存建物の法的に不適格な部分の指摘と是正
はじめに用途変更をする既存建物が 現行の建築基準法に適合しているか?すなわち工事完成時に「検査済書」を受けた状態のままかどうか?の確認がされます。一級建築士 (設計者) が既存建物 完成図と照らし合わせて確認します。
今回の確認では、
- 外部の立体駐車場近くに警備員用小屋詰所が設けられていてる
- 共用トイレの出入り口部分の防煙区画で区画垂れ壁が取り除かれている
という点が「既存不適格部分」として報告されて、是正工事がされることになりました。
- 警備員用小屋詰所は撤去
- 防煙区画は復帰設置
構造荷重の確認
今回 用途変更する部分の構造荷重について、当初建てられた際に設計された構造荷重より 今回用途を変更する部分の構造荷重が軽くて安全であることを確認します。
当初は「事務所」だったので その設計構造荷重は2900N/m2≒300kg/m2で設計されていました。今回用途を変更する「飲食店舗・物販店舗」に利用される部分の
- 床壁天井の仕上げ材料
- 配置利用される家具や器具や商品
- 客や従業員
の荷重を詳細に計算して、元々の設計荷重を下回ることが確かめられました。
防火区画の変更 (異種用途区画)
「防火区画」は、建物内で起きる火災を他に広げないために設けられる防災の構造物や設備で、建築基準法で規模や用途によって種類があって設置が義務付けられています。
防火区画は、面積や使用用途などによって形態が変わります。
- 面積区画・・・一定以上の床面積を持つ建物に設けられる防火区画で、建物の種類によって500~1,500m2の一定面積ごとに防火区画を設置します。
- 高層階区画・・面積区画の一種で、建物の11階以上の階に設けられます。11階以上のようなはしご車が届かない階は消防活動が難しいので、延焼をなるべく抑えられるよう通常の面積区画よりもさらに小さく100~500㎡の一定面積ごとに区画します。
- 竪穴区画・・・吹き抜け、階段、昇降路、ダクトスペースなどに設けられる区画です。階段などは火災発生時に避難に使われることもありますし、吹き抜けなどは上下に連続した空間は火が燃え広がりやすいので防火区画を設置します。
- 異種用途区画・複数の用途に使われる建物で必要な防火区画です。用途が違うと、利用形態や空間形態が異なり、避難の遅れなどが生じやすいことから、異なった用途の空間に火が燃え広がらないよう、用途の境界部分で区画します。
の4種類があります。
今回、当初は建物全体が「事務所」の用途だったので、異なる用途と用途の間に出来る「異種用途区画」は無くて、上記にはない「防煙区画」になっていました。しかし今回、この「防煙区画」が用途変更 (事務所→店舗) により「異種用途区画」に変わりました。
異種用途防火区画仕様への変更
これまで「防煙区画」だった間仕切り壁が「異種用途区画」の「防火区画」になるために仕様が変わります。
間仕切り壁は1時間準耐火構造にすることが必要で、それは鉄筋コンクリートの壁 もしくは LGS+PBt12.5×2を両面に貼る 壁仕様となります。
これまでは LGS+PBt12.5両面一枚貼り だったので、両側にPBt12.5 を増し貼りすることになりました。
防火区画の貫通処理
防煙区画が防火区画になりましたから、区画を貫通する配線や設備配管は区画貫通部で防火処理を行う必要があります。
配線や細い配管が貫通する部分には火炎が触れると膨張して火災の延焼を止める耐火パテを充填して、空気を通すダクトには火災時には鉄板で開口を塞ぐ防火ダンパーを取り付けて、処理を行いました。
開口扉の変更:特定防火設備
間仕切り壁で人が出入りする場所には扉が取り付けられています。これまでは鉄製 (不燃材) の扉で「防火設備」という仕様の扉でした。今回「異種用途区画」の扉 (開口設備) となるのでその仕様は「特定防火設備」になります。防火遮煙性能が上がるので既存の扉は取り替えられることになりました。
排煙設備
火災時に発生する煙を建物外に排出する外壁窓は「排煙設備」としても設置されています。この「排煙設備」が基準通りに設置されているかを改めて確認します。
換気設備
室内の空気を外部に排出するして取り替える設備の設置が義務付けられています。
非常用照明設備
非常用照明器具とは、火災や地震などによって停電したときに、予備電源によって点灯し、室内から外部に安全に避難したり救助したりすることを補助する照明器具です。
避難設備(階段や通路)
今回は用途変更する場所が道路に直接面する地上階の場所で避難口が面しているので特段の説明は不要でした。
確認済書
以上の内容について「用途変更しても法令基準に準拠していることが確認できた」ため、福岡市建築指導課より「確認済書」の発行を受けて工事が着手されました。
工事完了届
工事が進み完成すると、
- 福祉のまちづくり条例(写真提出検査)
- 消防法(現地立会い検査)
について検査を受けて合格した後、建築基準法の確認申請については一級建築士の監理者が検査をして合格しましたので「工事完了届」を福岡市の建築指導課に提出して受理されました。
この工事完了届の提出受理によって建物は適法な建築物になりました。
—北島建築設計事務所が行った用途変更など申請手続き実績説明—
下の各行文は 用途変更を行なった際の解説記事の題名リンクです。ご興味ある内容をクリックして解説記事をご覧ください。
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