土地購入して新築した木造3階建歯科医院デンタルクリニック診療所設計

女性歯科医師先生が横浜市金沢区の関東学院大学キャンパス近くの平潟湾を臨む場所で、新たに土地を購入して歯科医院を建てて歯科診療所を開設されました。

土地を購入する

医師先生の方針は、

  • 土地の購入
  • 既存建物の解体
  • 歯科医院の建設

を行って、歯科医院を開設するものでした。

土地を購入するにあたって、候補となる土地に希望する歯科医院が計画できるか?の確かめが行われました。

ご希望される内容に対して敷地の広さは窮屈で、建ぺい率一杯の建物配置と間取りプランの複数案が検討され、何とか歯科医院の計画が成立すると判断されて、土地購入を決断されました。

歩道縁石の切下げ・申請

購入した敷地には既存の建物が建っていました。(既存建物は飲食店)

既存の建物を利用して歯科医院を開院するには適さない事は以前に検討が済まされていたので、既存建物は解体することになりました。

既存建物を解体するにあたり、敷地内への車両の出入りを容易にするために、歩道の縁石の切り下げを変更することになりました。

現状は、車両の出入りが困難な歩道の段差で切り下げがなくガードレールもあったからです。

歩道の切り下げ申請を金沢区の土木事務所に届け出て許可をもらい、歩道の切り下げ工事が行われました。

既存建物の解体

歩道の切下げ工事が行われたおかげで、車両が敷地の中に入ることが出来るようになって、既存建物の解体工事が始まりました。

解体のための重機が入れるようになって 手壊しによる作業でなくなり、工期と費用が抑えられました。

概算工事費

建設出来る建物の規模は決まっていて、上限の大きさで建てることは間取りプランの検討の時には分かっていたので、この時点で掛かる費用の試算が行われました。

規模・内容を説明し、ご協力頂ける工務店様に「概算工事費」のお見積の算出をお願いしました。

銀行融資相談資料

医師先生は歯科医院建設に融資をお願いするために、以下の資料を取り揃えて相談されました。

  • 計画内容図面
  • 建設費用概算見積
  • 歯科器具費用概算見積
  • 事業計画書

銀行査定後、融資が決定されて計画が進められることになりました。

敷地の現況測量

正解な敷地測量図が無かったため改めて敷地の現況が測量されました。

  • 敷地内外の高低差
  • 敷地周囲の塀やフェンス
  • 隣地建物の外郭と窓の位置
  • 隣地の歩道橋の位置高さ

設計にあたり、窓開口の位置について支障が無いようにするためでもあります。

狭小敷地の歯科医院の間取りプラン

改めて歯科医院の間取りプランの詳細が検討されました。

歯科診察台2台+1台の間取りプラン

歯科の診療台ユニット合計3台を、地上1階に2台、2階に1台を配置する計画の方針は初めの検討で定まっていました。

間取りプランは可能な限り無駄のない計画が求められました。それはすなわち移動空間の廊下や通路を限りなく少なくして各部屋とのつながりを保てることにしました。

患者様入口とスタッフ出入口

建物を建ぺい率最大の大きさにして、かつ長方形の外殻にした場合、道路境界線までギリギリに計画したので、患者様の出入口とスタッフ出入口 (勝手口) の位置が検討されました。

患者様の出入口については歩道側から出入りすることが検討されましたが、出入口にはシャッターや雨除け庇を設置したいため、道路境界線ギリギリまで建物の外壁線が迫っているため、一度敷地に入った建物の側面に設けることになりました。

スタッフ出入口 (勝手口) の位置は間取りプラン上からも敷地の奥の建物の側面に設けることになりました。

待合室

診療は完全予約制で、診察台ユニットが2台のため、待合室は時間調整でお待ちいただく患者様の人数を4人と定めて部屋の大きさが確保されました。

受付カウンター

可能な限り不要なものを省くことで、狭小地における間取りプランを整理させるために、受付カウンターが必要かどうかの検討がなされました。

医師先生と相談したのは、

  • スタッフは最小限にする
  • さまざまな役割は医師先生も含めて兼任する
  • 受付カウンターで行うことを診療台で行ったり
    機械精算機などで済ませるようにする

と今までの受付カウンターの役割を改めて見直したり省略することにしました。

検討の結果、受付カウンター自体はなくす事はできませんでしたが、最小限の役割にとどめることで、小さな受付カウンタースペース (約畳半帖程度) になれました。

次回予約と診療費用支払い

受付カウンターの役割を少なくするには、次回の診療予約や診療費の支払いをカウンター以外で行うようにされました。

診療の次回予約は診察台に患者さんがいるときに 次回の診療方針を説明することと同時に行うことにしました。パソコンやタブレット端末にスケジュールソフトがあって、そちらに入力することで可能にしました。

診療費の支払いも、待合室と診察室の中間にあるスペースに機械精算機を設置してそちらで済ませていただくようにしました。

自動精算機を受付と診療室の中間に設置

診療を終えて、次回の予約を確保した患者様には診療費をお支払いいただきます。

診療の支払いは受付カウンターではなく、診療室と受付の間の位置に自動精算機を設置して、そちらでお支払いをいただくことにしました。

自動精算機は大きく設置には広いスペースが必要で、中間となる通路部分に設置することで患者様のスムーズな行動を促すことができました。

患者様用トイレと洗面台

患者様用のトイレは待合室に面して設けられました。

手洗い洗面台は台とボールが一体となった器具で、手を洗った水しぶきが飛び散っても洗いやすい器具が選ばれました。

診療室

診療室は、診療ユニット台が2台設置されました。

通路部分を可能な限りなくすことで、面積の縮小を図るために、診察台と診察台は逆方向を向いています。

医師先生やスタッフの方も移動距離は短くて済みます。

患者様同士も反対側を向いているので、視線を気にすることなく診療が受けられます。

診療台の照明

診療台に乗った患者様は、ほぼ水平の体勢になり視線は天井を見上げます。天井に付いている照明が下を向いていると患者様は照明の光源が目に入り眩しい状況で診療を受けることになります。

そこで診療台の上部は間接照明にして患者様が診療中眩しくないようにしました。

 ▶︎▶︎ 関連解説記事 「患者様が眩しくない診察室照明

医師先生やスタッフの皆さんの診療部分はダウンライトを設けて明るい手元になれるようにしてあります。

手洗い作業台

診療室には、手洗いシンクや診療器具を置いておく作業台が設けられています。

台の下は引き出し、台の上の壁面には可動棚を設置して、材料を収納したり、器具を並べておけるようにしてあります。

カルテ記入台

作業台はカルテをパソコンで記入する台にもなっていて、電源コンセント・ネットケーブルが設置されていて利用できます。

X線室

X線室は診療室に隣接していて、X線室の扉の手前にパソコンを設置する場所が設けられました。

X線室は設置される。レントゲン検査器具に必要なスペース寸法が確保されて、放射線を遮蔽する鉛板が壁・天井に貼られています。

医療機器洗浄消毒室

X線室の隣には使用した診療器具を洗浄・消毒する部屋が設けられました。

直近には、スタッフの出入り口が設けられて、患者様とは分けられたスタッフの出入り口、材料器具や廃棄物の搬出入口、として独立しています。

2階

2階には長い時間を必要とする診療室が設けられました。

診療室には1台の診療台ユニットが設置されました。

長時間の診療を前提としたために、医師先生やスタッフ、患者様もリラックスできる環境を考慮して、あえて複数の診療台を置かずに1台のみとして、周囲に十分なスペースを確保されました。

患者様のご家族も一緒に居られるように、お子さんの治療も安心して出来るように (他の患者様に気を使わないように) されました。

3階

3階は院長先生の休憩や執務を行う院長室が設けられました。

また、3階建ての建物を法令上最高高さまで伸ばし、ロフト(小屋裏収納)を活用して、カルテ書類の収納場所として利用されることになりました。

保健所確認 診療所開設届

間取りプランが定まる前に保健所に事前相談に参り、歯科診療所として問題無いか?を確認して頂きました。

なお、横浜市は以前は各区に保健所がありそちらに相談に行きましたが、現在は横浜市役所の医療局に集約されています。

事前相談

診療所の開設届は診療所が完成して直ぐに申請を行いますが、その際に間取りプランに支障があると直せないため、設計時点で事前相談を行なって内容確認をしておく必要があります。

間取りプランの確認

保健所の担当官の確認内容は、おおよそ以下の内容です

  • 受付の中は患者さんが触れられないように区別されているか?
  • 診療器具や消毒室は患者さんが触れたり間違って入り込まないようになっているか?

間取りプランの立案の時から上記内容については前提条件として進めているので、示した間取りプランで問題ないことを確認しました。

医院名の重複の確認

候補としている医院名が既存の他の医院と重複しないかを確認します。これも重複が無く、問題ないと確認を頂きました。

建物の外観

建物は、面積を建ぺい率最大・容積率限界まで大きくする方針で間取りプランが定められ、高さを10m未満最高まで、北側高度斜線一杯まで高くする方針で計画されました。

規制から除外されるバルコニーを、2階、3階に設けて、各々室外機置場や物干し、休憩場として利用されました。

上下に高くなる建物の外観を利用して「住宅ではない 医院である」ことを強調できるように、外壁材については複数案が検討されました。

いずれも建物の外観で医院を視認出来るよう検討されたものでしたが、最終的には 外壁材を段差を付けて縦縞に貼り分けて、段差の陰影により立体的にも見えるよう工夫した案が選ばれました。

新築歯科医院デンタルクリニック診療所

貼り分けられた外壁の内側一面にのみ窓は開けられて、外側の外壁材が下から一番上まで伸びて、3階建物高さを強調した建物になれました。

地盤調査

設計がまとまる前に既存建物解体が終了し、更地となった敷地で地中の建物を支える地盤高さを調査する地盤調査が行われました。

地盤改良の検討

地盤調査結果で、既存建物が以前に行った地盤改良部分が健全に残っていることが判明しました。この地盤改良部が今回の建物にも利用出来ることが確認できたため、その上に建物基礎を載せる計画になりました。

器具メーカー様との協議

歯科器具メーカー様と診療器具に必要な電気設備や給排水配管について確認されました。

スペース寸法

歯科診察台ユニットの周囲寸法は医師先生とも相談し、日常の使い方やメンテナンス時のスペースを確保しながら位置が定められました。

必要なコンセントや通信コンセント

歯科診療台ユニット、手洗作業台、X線室、パソコン作業台などに必要な電源コンセントおよび通信用ネットコンセントの配置について、綿密に個数と位置が設定されました。

配管配線

床下の配管・配線を行うために床下の基礎は高さを下げて配管・配線スペースを確保しています。全ての床下基礎を一律に下げてしまう方法もありますが、工事費用を少しでも抑えるために床下配管が必要な部分だけ地面を掘って下げています。(一律に配管が必要な深さで下げることは明快な組み立てになりますが、土を掘る工事費・基礎から床を支える束立ての費用が大きく嵩み無駄になるので床下配管をする範囲のみです)

立体的に交差する配管を正確に設置した後、床が貼られていきます。

医院名サイン

医院建物は道路交差点の角地に立地しています。周囲の歩道・歩道橋・道路を往来する歩行者や車両から認知しやすいように、医院名を表示されました。

壁面医院名サイン

医院の名前の表示=看板は、周囲の歩道や歩道橋、道路を往来する車両から目立つことを考慮して、2階のバルコニーの壁面に立体文字で設置されました。

医院名表示は複数あっても煩雑になるだけです。様々な場所からでも認識出来る場所と大きさと表示見易さが検討されました。

玄関ガラス面に医院名と診療科目と診療時間

歯科医院を認知して下さって、診療を受けたいというお気持ちになった場合は、医院の診療日時の詳しい情報に触れてもらうためにはネットのサイトが用意されていますが、実際に医院前を往来している方の目に入るように、玄関入口の自動扉ガラス面に医院名と診療科目と診療時間が表示されました。

工事請負契約

設計図がまとまり、設計図を複数の工務店様にお届けして、工事金額のお見積りをお願いしました。

ご提出いただいたお見積りの内容を精査して (設計内容がしっかりと反映されているか等の確認)、医師先生が金額を重視して工事施工者様を選定されました。

その後 工事請負契約が締結されて 工事が着手されました。

地鎮祭

無事 工事請負契約が結ばれた後、すぐに地鎮祭が執り行われました。

お施主様から氏神様にお願いしてお出ましをいただきました。

当日は酷暑の暑さだったため工務店様がテントを用意して下さって、その下に笹を立てて、しめ縄で囲われました。

祭壇が組み立てられて、砂山が築かれて準備が整いました。

普段の暮らしではこのような祭事は行われないため、神主様が各次第についてご説明をしてくださり執り行われました。

敷地の購入、歩道切下げ、既存建物解体、厳しい条件による新築建物の設計、歯科器具の選定と設備配管、様々な課題を解決して来られたお施主様の感慨はさぞ深かったことと推察します。

安全で品質の高い工事を規模に銘じて心引き締めて今後の工事監理に臨むよう心を引き締めました。

基礎コンクリートの配筋検査

基礎コンクリートに埋め込まれる鉄筋の組み立てが行われました。コンクリートはこの鉄筋が中に組み込まれているために、コンクリート単体だけでは弱みのある 引っ張る力や曲げようとする力が加わっても強く耐える構造になっています。

鉄筋はセメントコンクリートが流し込まれてしまうと触ることができないので、鉄筋が組まれた時点で入念な検査 (鉄筋が所定の数・位置に組み立てられているか?) を行います=配筋検査と言います。

この配筋検査は「姉歯耐震偽装事件」の後、多重の検査員によって行われて見落としが無いよう制度化されています。

私共 設計者(監理者)の他に、確認検査機関や第三者検査機関から検査員が来られて検査し、合格した後、コンクリートが打設されます (流し込まれます) 。

棟上げ上棟

基礎コンクリートが完成した後、その上に木造骨組みが組み立てられます。木造の骨組みは沢山の大工さんが集まって、一気に一日で組み立てられます。この組み立てを「棟上げ (むねあげ)」「建て前 (たてまえ)」「上棟 (じょうとう)」などと呼びます。

それまで小さな図面や模型で認識していた建物が、実際の大きさで出現する瞬間です。

木骨組み連結固定金物取付け設置検査

組み立てられた木の骨組みを金属の固定金物でしっかりと連結させます。

この金物の設置も重要で、確認検査機関による検査を受けて合格する必要があります。

屋根外壁内側断熱ウレタン樹脂発泡材吹付

建物の木造骨組みが組み上げられ、屋根外壁に木板が貼り付けられると建物の大きさ形状が判るようになります。

すぐに屋根と外壁面に防水シートが施されて雨水が内部に入らないようにされて、さらに外壁面の窓も設置されると、外部側の工事と内部側の工事が分かれて進められることになります。

内部側の工事は、はじめに断熱材が施されます。

断熱材は巷では一般的に以下の言葉で説明されることが多いですが、実際は法令的に困難だったり実際の経過を鑑みますと「ウレタン樹脂吹付発泡断熱材」が今現在は最適と考えお勧めして施工されています。

  • 外断熱工法・・・断熱材を建物骨組みの外側 (外気側) に施す工法ですが、法令に基づいて建物が「耐火構造もしくは防火構造 等」を求められる状況にある場合は、外断熱は施工不可です。相当な過疎地でないと現実的には不可能です。
  • グラスウール断熱材・・・ひとことで言うと綿もしくは布団のようなフワフワした空気層を形成する材料ですが、骨組みとの隙間が出来たり、完成後は水分を含んだり振動したりで形状が変わって下方に垂れてくる習性にあります。解体するとそのほとんどは下方に落ちていて、断熱材の効果を発揮していないものを多々見てきました。

よって当事務所では、骨組みの凸凹に隅々まで入り込み、経過しても形状が変わらない、現場吹付発泡ウレタン樹脂の断熱材をお勧めしています。

スプレーで吹かれたウレタン樹脂材は空気に触れて発泡し、見る見るうちに膨らんで断熱層を形成します。吹かれる樹脂材が液体なために、隅々まで吹き付けることが出来て、発泡材は木材に引っ付きしっかりと固定されます。このことで、隅々まで行き届いて、劣化落下しない断熱面の形成が可能になっています。

断熱材が施されると一気に外部の温度が内部に伝わらないことが、如実に判るようになります。

⁉️写真ー施工前・施工後

機械室の位置と形

歯科診療器具に必要な圧層空気やバキュームのための器具を設置しておく場所はその広さの関係から建物の外に置かれることになりました。

機器は雨風に耐えられないので収納箱を用意してそちらに納められました。

診療所開設届と保険診療申請を行って開院診療開始

建物が完成して確認検査機関の工事完了検査を受けて合格して「検査済書」を取得した後、診療器具が設置されて「診療所開設届」が提出・受理されて、厚生局に保険診療申請を行なって、正式に開院・診療が開始されました。

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